1. ローザンヌ大学での論文一本目が Evolutionary Applications にて掲載されました。
以下、簡単な解説。
微生物の中には環境中の有害物質の除去など、 有用な機能を持つものがいます。しかし、 微生物はその世代時間の短さゆえ、すぐに進化し、 その有用な機能が失われうることが報告されています。そこで、微生物にとっても有害な物質 (例えば、重金属など)を分解する場合について、数理モデルを用いてどのような培養方法を用いれば微生物の進化動 態を制御でき、この問題を回避できるかを検討しました。その結果、環境に流入する有害物質の濃度を制御することで、この問題を解決できることを示せました。
2. 二本目の研究を投稿しました。プレプリントも公開中 (https://arxiv.org/abs/2007.12090)。
上の研究では、環境に流入する有害物質の濃度を操作する = 環境変動を起こすことで、進化動態 (ある種の持つ性質の時間変化) を操作できることを示しています。同様に、そのような環境変動で群集動態 (各種の個体数の時間変化)も変化することが知られています。また、近年の研究では環境中の栄養や有害物質、pH などによって微生物間の種間相互作用が変化することも知られている。すると、環境変動は種間相互作用、ひいては群集動態に影響すると予想できます。しかし、環境変動が生じる 速さ(あるいは頻度) はさまざまです。そこで、環境変動の生じる速さは種間相互作用や群集動態、種多様性でどのように影響するのか、シミュレーションによって調べました。その結果、環境中に存在する有害物質の濃度に応じて、環境変動の速さが群集に与える効果が変わることが示ました。
本研究は英国の Mauro Mobilia 博士との共同研究です。